★毎日、通勤途上で読んでいましたが、目の奥が熱くなって、鳥肌が立って来ます。通勤読書には重い本ですが、引き込まれるように読んでいます。 |
||
★この本を紹介してくれたのは、音楽とインターネットを通じて知り合った著者の実の娘さんです。メールのやり取りの中で、80歳を過ぎた実母が自分の戦争体験を残しておきたいと、ワープロに向いはじめ、娘さんの協力でホームページまで立ちあげたことを知らされました。
そのお母さまが今度は、8月の終戦記念日に自らの戦争体験を綴った本を発刊されたと聞き、「ぜひ読ませてください」とお願いして手にした本です。 私は、この本を読んで思ったことが2つあります。 一つは、いうまでもなく戦争の悲惨さです。著者は、「まえがき」で「阿鼻叫喚の満州から生きて帰ってきた」と表現されています。 この本では、「人間の死」が、いくつも克明に描かれています。 日本の敗戦を知り、満州の国民学校の校長一家が自決したときのこと。第九次十箇団の総本部長が、物資を隠匿詐取していたために殺されたときのこと。遺体の入った箱の隙間から血がしたたり落ちて、オンドルの上のアンペラを汚す。「早く朝食を済ませ、遺体の始末をしなければ」と、ためらうことなく、その血を拭き取り食事の支度をしなければならなかった著者。どんなに辛く、悲しい思いをしながら食材を切り、遺体の身体を拭いたことでしょう。 あるいは、ソ連兵の思いがけない乱入で、車庫や釜の中に逃げ込むが、「こんな恐ろしい目に遭うのだったら死んだほうがいい」といって、青酸カリを飲んで自殺をはかろうとしたこと。それを「どうぞ苦しまずに死ねますように」と念じる著者。 「この子の故郷、日本に帰ろう」と果てしなく続く中国大陸を二歳になる子どもを背負って、必死で引揚げてきたにも関わらず、日本に戻ったとたんに二年半という短い生涯を閉じることになってしまったときのこと。 「阿鼻叫喚」という言葉には、いくつもの人間の「生きたかった」という思いとそれを許さない戦争という非理性的な力が生む、想像を絶する悲惨さを憎む著者の思い込められているように思います。 私は、戦後生まれで戦争の体験がありません。ですから、著者が表現した「阿鼻叫喚」というこの言葉を、どれくらい自分に引き寄せて受け止めることができるのか、これがとても大切だとおもいながら読みすすめていきました。 時あたかも、米国への同時テロ事件とそれへの軍事報復が秒読み段階に。 どんな理由をつけようとも、人が人を殺すことは正当化できるものではありません。この「大陸の花嫁」で描かれているように、いつでも、戦争の犠牲となるのは、何の罪も無い女性であり子どもたちです。 戦争の悲惨さを二度とくり返してはならない、そのことを強く思いました。 日本人は、あの侵略戦争で途方もない数のアジアの人びとの命を奪いました。そして、おびただしい空襲とヒロシマとナガサキへの原爆投下で何の罪もない人々の命が奪われました。失われた一人ひとりの命には人生があり、二つと同じものがない感情を持ち合わせていたのです。 私は、もっと、深く喜び、深く悲しみ、深く怒る、という人間の共感力、そして争いごとはお互いの十分な話しあいで解決するという理性の力を、一人ひとりの人間がつけることが、何よりも大切だと思いました。 そのことの大切さと、人間の理性への信頼を確信させたのが、「大陸の花嫁」という著作に結実させた著者の実践であると、私は思います。 なお、本書は、「老楽日記」(おいらく)と二本立てとなっています。こちらは、著者の最近の日常生活を書き綴ったもので、句集もあちこちにちりばめられています。最近になって日記を書き始めた私にとって、日常のことをこれだけ生き生きと書き続けられる著者の文章力に脱帽です。そして、何よりも、日記を通じて伝わってくる、活発さ、生きることの喜び、他者へのあたたかさ。ぜひ、こちらもおすすめです。 |
||
★私は、37歳現在4歳と2歳の子供の子育て中です。戦争を知らない世代ですが、井筒さんの本が胸にしみました。
夫の転勤で現在、引揚の地、舞鶴に住んでいるのも何かのご縁のような気がします。 井筒さん、本当に本当に大変だったのですね。特に子供さんを必死の思いで連れて帰国されたのに残念なことになられたのは、同じくらいの子を持つ親としても大変つらいです。 でも、戦争中〜戦後、一変した境遇の中で、いつも女性としての誇りを捨てず前向きな態度で、強い意志を持って生きておられる姿に感動しました。 そして当時の克明な記憶、、、、本当に驚かされました。 私は長崎出身で縁あって被爆者の方々の話を多く聞く機会があり、また微力ですが核兵器廃絶のための勉強・活動を同世代の人たちと行っています。放射能による一瞬の死もあれば、中国で蛇の生殺しのような状態で死んでいく人もあり、本当に戦争は、罪のない一般の人の命を無残に奪っていったのだと思います。 また女性ということで、その苦しみは男性とは別として、辱めを受け屈辱の思いに耐えなくてはならなかった人のことを思うとやるせません。 しかし、井筒さんの「大陸の花嫁」を読み終えたあと私は不思議なくらいエネルギーをいただきました。 自分もこれから頑張っていこう!というような溢れるエネルギーです。 ありがとうございました。 井筒さんも書いておられるように、この体験は多くの人に伝え語られていかなくてはいけないと思います。 戦争の歴史観は人によっても、国によっても異なっていますが戦争体験者の体験談・当時の思いは、万人が共通して分かち合うべきものだと思います。 そして、次の世代に引き継いでいかなくてはいけないと思いますし、自分の世代にはその使命があると思います。えらそうに書きましたが、これから子供を育てる上で、井筒さんの思いをせめて、自分の子供にしっかり引き継ぎたいと思います。 本当にありがとうございました。 |
||
NO8へ NO9へ NO10へ NO11へ NO12へ NO13へ NO14へ
|