引 揚 げ  五句

   

ついに帰国 防寒服は 襤褸(ぼろ)でもいい

われに祖国 敗れても月 のぼりくる

俘虜と書かれて どっち向いても 枯野原

雁わたる 北満南満は よその国

みなし子に 夕焼満州国は亡し

 

★ 昭和二十一年八月二十八日。ついに私達にも帰国は許され、チチハルから引揚列車に乗りました。

  しかし、無蓋貨車にひしめき折り重なるように乗せられた引揚者は、蚤虱はもちろん、伝染病との戦い、そして餓え、また匪賊にも襲われました。

  死人が出ると、貨車の止まった所で、野原の真っただ中へ捨てに行ったのです。

 

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