中国人集落 十二句

 

小孩(しょうはい)に 豚百頭や 解氷期

草萌ゆる 日本語満語 小孩と

五月の野 小孩追ふて 豚歩き

腹時計 日時計 素っ裸の苦力

向日葵(ひまわり)や よちよち纏足(てんそく) 

出ては入り

纏足の たらたら立ちて 西瓜食ふ

吹雪く日の 釜や丸ごと 牛を煮る

年来るや 選ばれて豚 曳かれゆく

正月の 口にひりひり 唐辛子

ひるねして 苦力の足の 大きかり

厩(うまや)出し 嫁の決まりし 小孩と

纏足の 鶏を集めて 日向ぼこ

 当時中国人たちは、日本人を友人に持つことを誇りに思っていたぐらいですから、私たちを大変優遇してくれました。

  中国人集落を通ると、纏足の女達が競って私達を家の中へ招じ入れてくれました。中国人の家では一つのテーブルが幾通りにも使われました。その上で丸のままの豚を料理したり、麺を捏ねたり、そして食卓にもなるのです。釜も一つしかなく、それがすべての煮炊きに使われます。

  最初は、群がる蝿を追い払いながらの食事にのども通りませんでしたが、やがて馴れてきました。

  姑娘(クーニャン)の友人も幾人かできました。

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