祖 国 七句
祖国は 木枯 パンパンという者に逢ふ
柿赤き 母国の汽車は 闇屋ばかり
ともに寝し 馬温(ぬく)かりし 藁(わら)の中
北満の 牛の乳房の 温かりき
大地駈くる 馬橇(ばそり)と犬と 若かりし
八月や 死にし子海を 見ず死にし
霜柱 異国祖国の 間(あいだ)遠し
★ そして、十月十五日、私は何も彼も奪われつくし、ボロボロになって故郷の土を踏んだのです。
憧れの内地帰還でしたが、故国の風も冷たく身に沁みました。
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